Garden of Lapis Lazuli

刹那的生命の備忘録

おすすめの「ホラー小説」2

前にお薦めのホラー小説を紹介しましたが、今回はその第二弾

 

夏も終盤にさしかかってきた今、また怖い物語を紹介しようかと。

怖いもの、肝試しやホラー映画は恐怖というより驚きの方が強く、本当のテロルを感じないものも多い。「わぁ!!」と大きな声を出して驚かす事には魅力を感じません(精一杯の強がり)。

 

本当の恐怖とは、何か

 

急に異世界に飛ばされて~や黄泉の国に引きずり込まれる~は非日常過ぎて恐怖とは違うものだと感じてしまいます。

 

そうではなく、どこまでも日常的なものにこそ恐怖を感じるのではないでしょうか。

例えば人通りの少ない夜道だったり、ふとした時に見る部屋の隅の暗がりであったり。

もしくは、未知のこと、可能性がある未来にも恐怖を抱くことがあります。もしかしたら起きるかもしれない物語。特に自分たちのごく身近な事にも関わらず、それについて知識がないことで陥ってしまったり。

近年そのような例として人工知能というものがあるでしょう。彼等について一般の人は何も知りません。知っていることとはたかが知れています。

だからこそ、人類が人工知能によって滅亡させられるなどなどの噂が出回るのです。人工知能が活用されている分野は、非常に多岐に渡ってきています。常に拡大している。日常生活のあらゆるところに進出し始めているのも関わらず、知識を持たないからこそ過度な恐怖を覚えるのです。これが未知ゆえの恐怖。

 

そして、これと同系統の恐怖を内包しているホラー小説をご紹介します。

それは

 

 

瀬名秀明氏 の 「パラサイト・イブ」

 

です。

この物語のキーになっているのは、私達が誰でも持っている身体。細胞の中に巣食う外からの侵入者にして共生者のミトコンドリアです。

 

聴いたことがある人もいるのではないでしょうか。高校生物を習っていると何度も出てきたかもしれません。オルガネラ、細胞小器官の一つであるミトコンドリア

この小さな分子の能力は非常に人体にとって、生物にとって大きいものです。なんてたって私達が動くエネルギーを作ってくれているのが彼らなのです。

詳しい話を書くと数日かかるので省略しますが、この頼れるミトコンドリアは元々違う生物だったとされています。原子の地球で、私達の祖先である小さな細胞に入り込んだか食べられたか分かりませんが、ある時を境に私達の一部になりました。一部になった彼等は私達にエネルギーを供給してくれる存在になったのですが、彼等は元々違う生物であるが故に我々とは違う独自の遺伝情報を持っています。

一部は我々の設計図であるゲノムに組み込まれましたが、まだいくらかの遺伝情報は彼等の中に在ります。

つまりは私達人間(他の生物もですが)の中には自分の「意志」で動くことのできる居候が住んでいるんです。たまたま今は休んでいるのか従っているのか分かりませんが、我々に協力的な彼ら。彼らは身体中のどこにでもいます。腕にも心臓にも脳にも。彼等がいなかったら私達はエネルギーを獲得できませんから、なくてはならない存在です。

 

しかし、もし彼らが独自の意志を持ち、私達の身体から出ていこうとしたり、はたまた身体自体をのっとってしまおうと動き出したら、私達はどうすることもできないかもしれません。

そしてその時は、もうあと数か月、数日、数時間かもしれない。急に身体が熱くなって意識が遠のいたら最後、もうミトコンドリアに貴方は支配されている....。

 

 

 

 

なんてね。

SFホラーな作品、あくまでフィクションですが、生化学的な見地からも楽しめ、小説の他にもゲームや映画などにもなっている作品です。

 

 

 

しかし実際、彼らは私たちとは違いますから。

 

いつか、私達のあずかり知らぬところで、動き出すかもしれません。

 

もう、動き出しているのかも。

 

 

身体の中の住人の気紛れには、くれぐれもご注意を(できませんが)。