水族館に行きたい + 理想の最期
人生で幾つかの水族館に行ったことがあるが、どこもとても素敵で(人が少なければ)落ち着ける。
色鮮やかな熱帯魚、大きい南米の川魚、深海の掃除屋、海に漂う月。
ゆったりと泳いでいる姿をみていると、時間を忘れる。
暗く視界が狭い状況と、それとは対照的に明るい水槽の中。
優雅に游いでいる姿
揺らいでいるひれが目を奪う
ずっと眺めていると自分自身を喪失する感覚に襲われる
特に私が好きな子たちは海月だ
泳いでいる姿が、ふわふわしていて
まるでドレスを着て踊っているようだ
何が良いのかというと、その生に目的性を感じないところかもしれない
ただ漂い、游ぐ事が彼等であり、彼等の目的を持たないという目的のように感じる
人間もそうあるべきだと感じる。
そうあることが、最も美しい命の姿であると
そうして、彼等の一個体の最期が消えていくように
私も最後は空気の中に溶けるように消えていきたい
痕跡を残さず、死体を残さず
水の中に絵の具をたらしたみたいに
ひろがって、薄くなって、儚く消えたい
理想の最期を表す存在
それが彼等だ
海に揺れる月
彼等と泳ぎながら、意識を失っていきたいが、
残念ながら彼等は毒を持っている
一緒に泳いでいたら、痛くて泣いてしまう
でも涙は、海の中で薄まっていって、
誰にもみられることはないだろうけど