海を眺めてみる
今週のお題「海」
海
光の粒が一面に広がり、ざぁ、ざぁ、と音を立てている
潮の香りが鼻に抜けて、足の裏に吸い付く砂粒の細かいことが嬉しい
砂浜に開いているちいさな穴から蟹が這い出てきて、横方向に歩いているのが可愛い
目には見えていないけれど、目の前にある海の中には何千何万の命が日々産まれて死んでいる
命を育み、そして奪い合っている
産まれるもの達の産声と、死にゆくもの達の最期の叫びが波を起こして海面を揺らしている
まるで命というものそれ自体が、生と死の間を常に揺らいでいるということを示すかのように
彼等の奏でる唄が波を産み、それはどこまでも伝わっていく
海はその中に内包するすべての命を養い、生と死を眺めている
久しく海には行っていない
一体いつからだろうか
陽が照り、反射する海、砂の白い色が肌を焼く
頭が燃え上がるのではないかというほど暑くなり、海に近付く
ざくっざくっと砂を踏む
海水に濡れて色が変わっている境界に着き、少しドキドキしながら濡れている所につま先を触れてみる
冷たくて気持ちが良い
足の裏全体でその冷たさを感じる
そうして、向こうから波がゆっくりと近付いてきて、足の甲までを包み込んだ
一瞬の出来事
身体全体に冷たさが染みていく
すぐに波は引いていく
そうしてまた、打ち寄せては返っていく
その繰り返し
「 まるで私たちの命みたいだね 」
気付けば隣に君がいて、世界から君の声以外の音が消えていた
私の声も
「 さっき感じた冷たいって感覚
それがね、命なんだよ 」微笑む君
「 でもね、すぐ消えちゃうの
簡単に消えるの 」君は遠く水平線を眺めながらそう言った
「 それが 美しいんだよ 」
そういうと君は、
風に吹かれて砂になった
風に舞う砂は、そのまま海の方へ
一体砂は、どこへいくのかな