空に沈む
道路に出来た水溜まりに映る自分の顔をみた。
そうしていると、彼がこう言った。
「こっちに来なよ」
そうして、向こう側から手を伸ばす。
こっちとあっちの境界、水面に彼の手が触れる。
ずぶずぶと、一気に沈んでいく。
身体がすっぽりあっちに入って、空に堕ちていく。
雨が登っていく。
こっちでは、雨は降るものではなくて揚がるものらしい。
少しずつ空に近付いていく。
不思議と恐怖は無かった。
どうしてだろう。
人の中にいる時よりも、とても静か。
気持ちが良い。
空にはたくさんの人がいるようで。
大体計算すると、生きている人の数の数兆倍の数らしい。
ちょっと、嫌になった。