結婚二年
結婚して二年。
月曜日の昼間に夫婦が両方家にいる家庭は少ないだろう。
そう思いながら黒い革のソファに寄りかかって、手に持った小説のページを進める。
目の前にあるテーブルの上で、先程淹れた珈琲から白い湯気が上がっている。少しずつ空間に香りが立ちこめていく。
家には時計が無いから夫婦のどちらかが音を出さなければカチッカチッという音もせず、無音の空間が生じる。読書を共に趣味としている私達の家ではこれがよく起こる。互いのページをめくる音だけが、BGMとなる。
静かだ。
君はベランダに面している窓際がお気に入りだ。そこのフローリングに座って黙々と本を読んでいる。自然と陽だまりができるそこは太陽が出ていなくても、君がいるから年中暖かだ。まるで冬の炬燵のようにぬくぬくだ。
君が本を夢中で読んでいる姿をみているだけで、どうしても幸福になってしまう。
この沈黙が、いくら続いても構わない。
暫く眺めて、再び本に目を落とす
文字の海を游ぐ
ページをめくる......
どれくらい経っただろうか。
気付けば、そこに君はいない。
テーブルの上の珈琲はすっかり冷えきっていた。
少し、肌寒い。