Garden of Lapis Lazuli

刹那的生命の備忘録

河のそばのホテル

私は身体を売っている。

場所は河のそばにあるラブホテル。

その五階にある、河を望める部屋の一室で暮らしてる。

色々なコネを使って住まわせて貰っている。家賃は売り上げの60%。

半分以上が消えてしまうけれど、エアコンは使い放題だしお風呂や服にも困らない。

眺めも悪くない。毎日起きると、水面がキラキラ輝いているのが見える。まるで違う世界を見ているような気分になる。

 

ぴろりんッという音と共にLINEが届いた。

今日の予約が入ったらしい。

午後二時からだ。

今日のお客は常連のOLさんだ。

軽くシャワーを浴びて彼女が好きそうな衣装を選んだ。

彼女は香りに敏感でプレゼントしてくれた香水を付けて会うと、とても喜んでくれる。爽やかな柑橘系の香りがする香水をふって、部屋を出た。

 

自分の部屋の真上が今日の仕事場だ。

フロントで鍵を受け取ってから部屋に向かって待つ。

彼女は部屋で待っていて欲しい派だ。

人によっては店の前で会って一緒に入るし、少し離れたカフェで合流する時もある。

部屋に一人で入るのは、実は勇気がいるイニシエーションだ。

優しくない社会のルールを破るのは、エネルギーを使う。

 

嗜好、欲望というの形や色は人それぞれ。同じものはない。

その人に合った最適解を選んで、時に修正をして、

今日も私は私を売る。

私を買ってくれる人に、私は儚い幸福と快楽を売る。

このビジネスは、とても、優しいビジネスだ。