Garden of Lapis Lazuli

刹那的生命の備忘録

理学と工学の研究指導スタイル 1

理学の世界と工学の世界に進む若者たちは、それぞれその路に進むモチベーションが大きく異なっている.これは勿論個々人にも大きく依存しているのだが、その中でもクラシカルな大きな溝については、互いに認識していないことも少なくない.その相互理解の程度が低い為、口論になることもある.

 

理学系に進む学生の中では

(1) 自分が興味のある対象を研究したくて進んだ人間

(2) 文系科目が苦手で仕方なく進んだ人間

(3) 特に何も興味がないがなんとなく進んだ人間

 

その中でも大学院に進む学生では

(1) 本当に研究がしたくて進む人間(30%程度)

(2) モラトリアムの延長権を獲得したいと進む人間(70%程度)

 

工学系に進む学生の中では

(1) 自分が興味のある対象を研究したくて進んだ人間

(2) 文系科目が苦手で仕方なく進んだ人間

(3) 就職に強いという理由から進んだ人間

(4) 特に何も興味がないがなんとなく進んだ人間 

 

その中でも大学院に進む学生は

(1) 本当に研究がしたくて進む人間(1.5%)

(2) モラトリアムの延長権を獲得したいと進む人間(35%程度)

(3) 修士卒での就職、学校推薦を狙って進む人間(63%程度)

 

このような割合になるだろう.

この中で理学・工学の中で「本当に研究がしたくて進む人間」は希少種であり、その大学・研究室別でその教育スタンスが違うが、特にそのモチベーション格差と最大公約数的に教育しなければならない制約条件の中で両スタンスの間で齟齬が生じる.

 

これは物議を呼ぶ種だ.

 

しかし、理学系博士前期課程進学者への教育は工学系博士後期課程進学予定者への教育へ共有される必要があると考えられる.

端的に現段階である前者のスタンスは

「獅子は子を谷に突き落とすスタイル」であり、自身の力を伸ばし指導教員さえ倒すような覚悟で進まなければアカデミアの世界で生き残っていくことは不可能だと教え込む.

 

そして、その指導の中で向き不向きを自覚してアカデミアの世界に残る者たちは減少していく訳だが、

後者の場合は就職時の経済的メリットを享受したい人間とモラトリアムの延長人間との最大公約数的教育により「そこまで気負わなくていいよスタイル」となってしまう.

 

後者のそれは日本のアカデミア界の衰退原因の主要な1つであると推測される.